妖怪男ウォッチ

恋愛文化人類学が趣味の外資アラサーOLによる、ラブ魔窟サバイバル記録。

婚活女子がよく言う条件「一緒にいて楽しい人・価値観が合う人がいい」がゆるふわすぎて危ない

お久しぶりです。ぱぷりこです。GWに2017年初記事ってどうなのよって感じなのですが、なにしてたかっていうと本を書いてました。5月15日、文藝春秋さんから出まっす!Kindle版も出ます♡ 

なぜ幸せな恋愛・結婚につながらないのか 18の妖怪女子ウォッチ

なぜ幸せな恋愛・結婚につながらないのか 18の妖怪女子ウォッチ

 
 タイトルは文春さんらしくまじめ〜な感じになってますが、宝島社さんから出た前著『妖怪男ウォッチ』の女子バージョンです。今回は「女子のための女子本」なので、皆が気になる「恋愛と婚活のパターン」についても書いてるよ! 以上、簡単な告知終わりっ!本編GOGO!

婚活女子が言う謎キーワード3選

お焚き上げ恋愛相談やask、飲み会などで、恋愛&婚活相談をされたら喜んで受けることにしてるのですが(同世代の既婚勢な友人たちとはお金・家事分担・キャリア・子育て・投資・住居の話ばかりになってきたため)、皆さん思い思いに理想やら現状やらを話してくれるのですが、その中でよ〜く聞くのが下記3つのキーワード。 

「一緒にいて楽しい人がいい」
「価値観が合う人が好き」
「包容力がある人がタイプ」

特に多いのが「一緒にいて楽しい人が好き」。なんでしょうね、この言葉、失われし古代言語で翻訳したら「私は1年以内に結婚できる」のアナグラムになっているの?だから皆、恋愛成就と婚活成就を願って1日1回は感謝を込めて口にするの?っていうぐらい多種多様な女子が言います。

「なんとなく結婚相手に求める条件っぽい」「年収やスペックなどのえげつない話をしていないので上品に見える」「口にするのが簡単」なため、婚活女子に大人気。

しかし掘り下げてインタビューしてみると、スペック重視な婚活女子よりもよほどえぐい本音が出てきたり、考えているようで考えていないノー戦略ぶりが見えてくることがよっくあります。

 1.「一緒にいて楽しい人が好き」

インタビュイー:中小メーカーの事務職。彼氏は大学時代に1年ほど付き合った人が1人だが、その後は特に彼氏なしで6〜7年。周りは年上の既婚者が多く、出会いがない。

ーー婚活を始めたとのこと。どういう人と結婚したいんですか?

一緒にいて楽しい人ですね!やっぱり結婚生活って長いじゃないですか。だから、やっぱり一緒に楽しく過ごせる人がいいなって」

ーーなるほど。確かに一緒にいて楽しくない人よりは楽しい人の方がいいですね。具体的にはどういうタイプでしょう?

「えー、なんだろ……一緒に話が盛り上がれる人?」

ーー同じ話題を共有できたり、好きなものの価値観が似ている、ということでしょうか。もう少しkwsk

「うーん、私、特に好きなものとかこだわりとかないから、そういうのとは違うかも……一緒に話していて楽というか。あと、私がわからない話とか仕事の話ばっかりしない人かなーと思います。別に私、趣味らしい趣味があるわけではないので(ドラマを見るのは好きですけど)、なにげない日常会話が楽しい人がいいですね」

ーー婚活をしてきて、「この人と話していて楽しかった!」という人はどういう人でしたか?

「婚活パーティーでお話しした、テレビ局の人でした。私が『すごいですね、あのドラマとかも関わってるんですか』って言ったら『俺なんか下っ端だからあんな大きい仕事には関われない』って笑いながらも、テレビ局の裏話とか芸能人の話とか、すごくおもしろい話をいっぱいしてくれて。それに、私が婚活用に買った緑色のドレスもすごく褒めてくれて。『緑色が好きな女性は穏やかだから家庭に向いてるって、仕事で関わった占い師が言ってました』って教えてくれたんです。そこからまた、おすすめの占い師さんとかの話も教えてくれて。どんどん面白い話をしてくれるので時間が経つのがあっという間で、ああいう人がいるなら婚活っていいかもって思いました」

ーーその男性とは今もお付き合いはあるのでしょうか?

「いえ、その後は少しやり取りはしたんですけど、その後に続かなくって。お仕事が忙しそうだったのでしょうがないかなとは思うんですが、私は別に美人でもないからダメだったのかな……なんか会話をまちがえたかな……とけっこうへこんでます。あまり自分が話上手じゃないっていうコンプレックスがあるからすぐ気にしちゃうんですよね。だからこそ、彼みたいな、気を使わなくても楽しい人がいいなって思うんですけど」

ーーそのあとの婚活で、彼と似たようなタイプとは出会えましたか?

「あまりいないですね……。話が盛り上がれる男性って少ないんですよね。いい人がいないってよく言われるけど本当だなって。たまに一緒にいて楽しい人はいるんですけど、そういう人からは選ばれないことばかりなんです。

最初はお互いの仕事とか生活とかの話でどうにかなるんですけど、2回目以降はなにを話したらいいのかわからなくって。婚活で会う人は接点も共通点もないですよね。男性はあまりドラマを見ないから女友達みたいに話せないし、私の仕事や生活の話は単調だから1回目以降に新しく提供できる話題もないですし、かといって向こうの仕事の話は興味ないし、天気の話とか、ここのごはんはおいしいですねとか、そういう当たり障りのない話で終わることが多くて、どうもときめく人がいなくって……だから婚活は私に合わないんじゃないかなと最近思っていて」

ーーふーむ。共通の話がないと話が盛り上がらないというなら、いっそのこと知り合い経由や会社での出会いに絞った方が向いてる気もしますけど。

「いないし無理なんです。小さい会社なので周りは年上の既婚男性ばかりだし、彼らに紹介とか恥ずかしくて絶対に頼めないです。それに男性の知り合いはいても男友達はいないし、数少ない女友達は親の紹介で結婚したか、学生時代の彼と結婚してるか、恋愛に興味がないマイペースな子なので、あまり紹介してくれる人がいるとも思えないですし……いるとしても彼女たちに紹介してなんて言えないです」

ーー知り合いはあまり頼れない、頼れるとしても恥ずかしい、だとすると婚活となるのもわかりますが……知り合いじゃなく共通点もない人とは何を話したらいいかわからないと。

「そうですね。あまり社交的なタイプじゃないのは自覚してるので、知らない人と会うと気疲れしてしまうんです。だから会ってもあまり楽しいと思える人がいないんです」

ーー確かに知らない人に会いまくるのはストレスだし気疲れしますが、それは男性側も同じだと思うんですよね。逆に自分から話題を振ったり、相手に質問したりとかはしてみました?

「うーん……どうでしょう……なんかあまり質問しすぎるのは女らしくないって思ってしまうというか、そこはやっぱり男性にリードしてほしいです。話をしてくれる方が楽ですけど、興味が持てない話題をされるのはつらいです」

うむ。それはつまり「雑学や話題が豊富で、自分が興味が持てる話題について、テレビのように面白おかしくコンテンツを提供してくれる、おもてなし上手のモテ男が好き」ということでは?

彼女の場合、「共通の話題がないとどう話したらいいかわからない」タイプであるにもかかわらず、共通の話題がある知り合い経由での出会いが少ない&自分で恥ずかしいブロックをしています。婚活を始める行動力はすばらしいですが、ほぼ共通の話題がなくゼロベースから始めなければならない婚活市場では、彼女が言うところの「一緒にいて楽しい人」はレアキャラです。なぜなら彼女が求めている条件を具体化するとこうなるから。

  • 会話の主導権を丸投げできて、自分は受け身でいられる
  • 共通の話題がなくても会話を続けられる
  • 自分の興味がある話題を引き出し、提供できる
  • 質問力・傾聴力がある
  • インタビュースキルが高い
  • ていうか、おもてなし上手
  • ていうか、モテ男

こうしたおもてなし上手の男性は、恋愛市場でも婚活市場でも大人気。恋愛初心者からも経験豊富な人からも等しくモテます。お焚き上げ恋愛相談でもこれだけの実績があります。

ブログでもいましたーね。

で、これはもう何度も書いてきていることですが、「おもてなしができて女性が楽しめるコンテンツを提供できるアラサー未婚フリー男性」は、高確率で遊び人です。

でーすーが!「一緒にいて楽しい人がいい」という女子たちは「遊び人なんて絶対に好きじゃない。浮気とかする人は無理」ともほぼ同時に言います。でもね、浮気しないで誠実でおもてなしができる男性、ほとんど彼女がいるか婚約者がいるか既婚だから。

受け身でオクテで恋愛経験が豊富でない女性は、恋愛市場での分布とエンカウント確率をよく把握していないせいか、「遊び人(女扱いができておもてなしができる人)みたいな人が好き。でも遊び人(浮気性)は無理」という、カグヤめいた無理難題をさらっと言いがち。

彼女たちは「会話の主導権を持ってもらって、自分は受け身で楽したい。でも、自分がつまらない話はいやだから楽しませてしい」と男性側に相当な負担を強いているわけですが、そこらへんの自覚はさっぱりなく、むしろ「私はスペックとかうるさいことを言わないから謙虚」だと思ってることすらままあります。

「いいところ取りしたい」けど「リスクは見ない」。これは新規市場へ参入するにあたってはあまりにノー戦略!あまりに情報不足!あまりに自覚不足!

はい、次。

2.「価値観が合う人が好き」

インタビュイー:広告会社の営業職。激務すぎて出会う暇がなかったが、アラサーになりようやく余裕ができてきたので婚活に乗り出した。

「ぱぷりこ!いい人いない?紹介して!」

ーーいい人。いい人の定義から始めたいんだけど、どういう人と結婚したいの?3条件上げるとしたら?

「えー私そんな高望みじゃないから1つだけだよー!価値観が合う人がいい!」

ーー価値観。具体的には?

「えーなんだろ。まず私は食べることが好きだから、食の好みが合う人ね。知ってるとおり、私イタリア大好きじゃん。だからイタリア料理とか好きな人がいい。あと、結婚しても絶対に年1回のイタリア旅行は外せないから、旅行を一緒に楽しんでくれる人がいいな。できれば子供ができてもイタリア旅行は続けたい。

あ!でも前彼みたいに『美術館?あんな古いもん見てなにが楽しいの』とか言う人はやだ!彼、サッカーしか興味なくて結局ほとんど別行動だったし。ちょっとああいうのはないかも。一緒に美術を見て楽しんでくれる人がいいなー。だから趣味が合うっていうのも大事!ていうか彼のせいでスポーツ観戦が趣味の人は苦手になったから、あまりそういうばりばり体育会系みたいな人じゃなくて文化系の人がいいな。そこも価値観が合ってほしい。

あと、私は親が与えてくれた教育を子供にも与えたいと思ってるから、そこらへんの教育への価値観も共有したいな。周りを見てても学歴って生涯年収に影響するから、大学は早慶以上に入ってもらいたいし、できれば海外大学も視野に入れたい。だからそういう教育を受けてきて『そういうのいいよね』って言ってくれる人がいい。あと、うちの親は先生をしていてけっこう教育方針にはうるさいから、ちゃんと勉強してきた人の方がいいかも」

ーーなるほど。つまり、価値観が合う=育った環境が似ており、かつ興味関心分野を共有できる人ってこと?

「そうかもー!」

ーー人間は共通点があるモノや人に好意を抱く生き物だから自然だと思うしいいと思うけど、「価値観が合う人」1つだけと言ってたわりには、すでに「食の好みが合う」「一緒に旅行できる」「美術に興味関心がある、あるいは興味を持ってくれる」「体育会系ではない」「文化系に興味がある」「ちゃんと勉強してきた=学歴がそれなりに高い」「高等教育への関心がある」と7つ条件が出てきてるけど、ここらへんの優先順位ってつけられる?

「え、そんなに条件あった!?」

ーーありましたぴよ。さらに言えば、結婚における価値観のすりあわせが重要なのって「金銭感覚」「家事分担」「キャリアプラン」なので、ここらへんの部分がすっぽーんと抜けてるのも気になる。結婚は生活だから、「一緒に生活できるかどうか」って大事だよ。

「あ、そこは考えてなかった。金銭感覚は、私が食事にけっこうお金を使うタイプだから、食に投資できる人がいい。毎日もやしでもオッケーみたいな人はやだ。

で、私は仕事が好きだから続けたいし、帰りが遅くなっても文句言わない人がいい。食事はまあ買えばいいし。そうすると良妻賢母を求めるタイプは無理かも?あ、無理だ!

家事は仕事優先であまりできてないから、ちゃんと家事ができる人がいいな。ちゃんと私が稼ぐ分、家事も半々がいい。ただ、子供がうまれる時のことを考えて年収はちゃんとある人がいい。別に高くなくていいけど、ミニマム400万。あーけっこうあるね!」

ーーさらに「食費にお金を使える人」「家事分担は半々=家事がまんべんなくできる」「フルタイム共働き希望」「年収400万以上」という条件が追加されました。

「価値観が合う」というたったひとつの言霊の中に、大量の条件を詰める人が多すぎます。

価値観とは広辞苑によれば「個人もしくは集団が世界の中の事象に対して下す価値判断の総体」です。総体だよ?総体。つまりはたくさんの物事の集合体ってことです。

「価値観が合う」という単語はそもそも「たくさんの物事に対しての判断が自分と似ている」=「大量の合致条件が必要」ってこと。

しかし、世の中で「自分と価値観がほぼ同じ」という人は数少ないです。生育環境と性格が似ている場合は確かに似ることが多いけど、これは「親の世帯年収・義務教育・高等教育・仕事」×「うまれ持った性格・親の教育方針・趣味嗜好」といった個別条件の組み合わせなので、ざっと考えただけでも7〜10カテゴリで条件を考えなくてはなりません。

なのに「価値観が合う人がいい」という人の多くは、その言葉が持つ「細かい条件設定」をまるっとスルーして分解しておらず、むしろ「そんな高望みしてないよ〜」「私は年収とか気にするタイプじゃないし!」と、自分の条件設定をやたら過小評価しがち

条件設定をちゃんと細かく見てないから優先順位もつけられず、結果として「細かい条件がやたら多いわりにその全部に合致している人を求める」という「求める条件がめちゃくちゃ多い婚活女子」になります。

しかも条件が多いと自覚しておらず「たったひとつだけの条件だから大丈夫♡」と楽観視しているぶん、自覚的に条件が多い婚活女子よりも危ない。

そういう女性が婚活を続けるとどうなるかというと、

「食事の好みが合わない=価値観が合わない」
「食事の好みは合ったけど家事分担に協力してくれない=価値観が合わない」
「家事はしてくれるけど文化にお金をかけようとしない=価値観が合わない」
「文化に興味があるけど仕事熱心ではない=価値観が合わない」
と、「なんか価値観が合う人がいないんだよね」と「価値観ジプシー」コースに突入まったなしの事態に!

はい、次。

 3.「包容力のある人が好き」

 インタビュイー:IT企業の広報。人見知りしないパリピでアクティブなので、出会いは多く、彼氏の数も多いが、1年以上続いたことがない。 

ーー最近、婚活を始めたんだって?出会いが多いのに。

「まーねー。でもこれまで付き合っては別れを繰り返してきたでしょ。1年以上続いたことがないし、アラサーにもなってこれってさすがにまずいよねって思って、出会いの幅を広げてるんだ。2年以内には結婚したいから、『結婚願望がある男=婚活市場にいる男』ってことで始めたわけ」

ーーあいかわらずアクティブでいいね!そもそも好きなタイプってどんなだっけ?

包容力がある男性が好きなんだよね。でもさー、結構いないんだこれが!」

ーー包容力。なんだろう、トトロとか森のくまさんとか菩薩とか、いろいろ包容力があるっていってもいろいろイメージがあるけれど。

「大人の余裕がある人!直近の元彼はね、まったく包容力がない人だった。出会って最初の頃は私の相談をいっぱい聞いてくれたから『この人は包容力がありそう!』って思って付き合ったんだけど、いざ付き合ってみると狭量なところが見えてきて冷めたんだよね。仕事の愚痴がけっこう多いし、『あーダメだ』とかすぐネガティブなことを言うし。

『付き合う前はそんな弱音を言わなかったのになんで?』って言ったら『付き合う前は格好つけてたし、あとあの頃は仕事に余裕があったけど、今はけっこうきつくなってきたから、弱音を吐きたいし彼女には頼りたい』ってさー。いやいいけどさー、でも私の話を聞いていても自分の話をし出すし、私のことを受けとめてもらってる感じがしない。かといって特に彼のアドバイスが役に立つわけでもないし……意見だよねそれ?役に立つの?って感じだし。やっぱり同世代ってダメなのかなー」

ーーまあ相性はあると思うけど、異動や転職とか引っ越しとか、慣れてない環境にいるのって相当にストレスだから、ネガティブになったり弱気になったりするのはわりと人類としては普通の感情だと思うけど……。ていうか「あーダメだ」もネガティブカウントでNGなの!?ツイッタの民は毎日言ってるよ???

Twitterとかそういうの見ないからわかんない」

ーーハイ。パリピだもんね。「包容力がある人」っていうとふんわりしてるけど、話を聞いてる限りでは、いつも余裕があって、自分の相談にオールウェイズ全力コミットして話を聞いてくれて、受けとめてくれて、適切なアドバイスをしてくれて、どんな状況でも精神の安定性がぶれず、ネガティブなことを言わない人がいいと言ってるように見えるけど、それ人類を逸脱してない?前世でものすごく徳を積んでないと無理じゃない?

「えーそう?別に年収とか顔とか気にしないし、『包容力がある人』だけだよ?普通だよ。お父さん、弱音とか絶対にはかない人だったし。いつも明るくいろって言ってたし。だから私はがんばってるよ。女の私でもできるのに、なんで男性ができないの?なんか現代の日本人男性って軟弱だよねーだからいい男がいないって言われるのわかるわ」

超絶マッチョ人外か、地母神か、癒やしの女神を募集してるようにしか見えません。

「包容力のある人」というとふんわりしていますが、その中身を解体してみると、「存在の全肯定」「正しい導き」「完璧性」を指していることがままあります。女性が言う「包容力のある男性がいい」、男性が言う「いつも笑顔の人がいい」の中身をきっちり解体してみると、だいたい次のような要望が見えてきます。

  • 自分の悩みや感情を全部受けとめてくれる
  • 自分を全肯定してくれる
  • 正しいアドバイスをして自分を導いてくれる
  • 弱さやネガティブさを見せない

うん、ちょっとそれ、普及型ホモサピには難しいかな?ていうか、こんな無理難題をナチュラルに他人に求めている御身はこれできるの???と思うわけですが、だいたいできないし、そもそも考えていない、という人が多いです。

「自分のことは全力で100%受けとめてもらいたいが、自分が相手を受けとめる気はない(というか考えてない)」という、圧倒的な非対称な関係を求める人は、他人を受け入れる余裕、多様な価値を受け入れる精神土壌がないことが多いです。そのため、相手に負担をかけられることを嫌がり相手の弱さを認めずにむしろ非難し始めます

「前みたいに戻ってほしい」

「いつも大人で余裕があるあなたが好きなの」

あたりはテンプレのプレッシャー愛の言霊です。下記の記事に出てくる男性とかもまじこのタイプ。

恋愛なら「幻滅!はいお別れ!」と次にさくっといけますが、結婚はいちおう人生をともにすることを前提としています。人生は長いので当然、誰しも浮き沈みはあります。だから「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも」と結婚式で言われるわけですが、「包容力がある人がいい」派は「病める時」「悲しみの時」はスルー。このように、けっこう人外な地母神ぶりをナチュラルに求める人、いるところにはいます。

ゆるふわ婚活条件の何が問題なのか

「一緒にいて楽しい人が好き」

「価値観が合う人が好き」

「包容力がある人が好き」

これらのゆるふわ言霊は、婚活相手に求める条件としてそれっぽく見えます。かつ、年収や学歴といったスペックの話にも見えないので「スペックとか条件を出す人ってみっともない」「私はそういう打算的な結婚はイヤ」という女子のニーズにもばっちり応えてくれます。
しかし見てきたとおり、これらのゆるふわ言霊は下記の問題を抱えています。

  • 具体的でないために、人によって定義が違う
  • 具体的でないために、1つの条件のように見えるが複数条件を内包している
  • 具体的でないために、複数条件の優先順位づけができていない
  • 具体的でないために、「遊び人がいいけど遊び人はいや」といった矛盾を抱えやすい
  • 具体的でないために、自分が求める無茶ぶりを認識できない

もし仕事で「この製品のターゲット層は?」という質問に対して「一緒に楽しんでくれるカスタマーです!」「価値観が合うカスタマーです!」「製品のコンセプトを全部受けとめてくれる包容力のあるカスタマーです!」と回答したら、電柱に逆さ吊りにされ、穴という穴からExcelパワポを流し込まれ、論理詰めふるぼっこコース待ったなしですが、なぜか婚活になると「え?なにその条件?中身は?つまりはどういうこと?」ということを平気で言う人がほんっとーに多いです。

 

なによりいちばん問題なのは「ゆるふわ条件をゆるふわのまま放置すると、彼女たちの目的=「結婚」の成功率が上がらないまま」ということ。

いますよ?特に条件をきっちり自覚せずとも、自分が求める「価値観が合う人」「一緒にいて楽しい人」と結婚できる人。でも、それは単に運がいい人です。

多くの場合は、下記のような事態に陥ります。

  • 周りが紹介しようとするも、条件がゆるふわすぎて紹介できずにスルー
  • 周りが、詳細をよく確認せずに自分が想像する「一緒にいて楽しい人」「価値観が合いそうな人」を紹介するも、相手の望みにマッチせずお断り
  • 「なんか違う」を繰り返すが、原因がわからないまま年月ばかりが経過
  • 「世の中にいい未婚男はいないんだ」と絶望して男性のせいにする

そもそも婚活で条件設定をするのは戦略を作るため。戦略を作るのは成功の確度を上げるため。ですがふわっとした条件設定ではふわっとした戦略しか立てられず、成功確度が低くなり、失敗を繰り返します。

 

成功率が低くても時間リソースをかければいつかは成功しますが、多くの婚活女子は「2年以内に結婚したい」「30歳までには結婚したい」「友達の中で最後はいや」とみずからリミットを設定していることがほとんど。つまりそれほど時間リソースもかけられない。

さらには、こういうゆるふわ条件は、「矛盾をはらんだ無理難題」「相手にばかり求めすぎ」といった婚活の難易度を上げるものが多いにもかかわらず「たいした条件じゃない」「そこまで高望みじゃない」と誤った見積もりを誘発します。

難易度が高い条件を上げることは人それぞれですが、難易度を過小評価すると「まともな男がいない」「婚活は自分に向いてない」と、見当違いな結論へいってしまうことも。

さらには失敗が重なると「他人のせい」「親のせい」『社会のせい」と他責にして、呪いをはくコースへいってしまうことも。呪い女子になると、ネガティブオーラがだだ漏れるため、男性から魅力的に思われる可能性が低くなり、さらに傷ついて呪いを悪化させる……という負のループにはまります。

結論。ゆるふわ言霊は滅せよ。

よく婚活条件の話になると「高望みしすぎなんじゃない?」「自分のレベルに合ってないんじゃない?」「現実が見えてないんじゃない?」といった話が出てきがちですが、問題は「条件の難易度が高い」ことではありません。

問題は条件が具体的でないこと、自分で把握してるつもりでまったく把握してないこと、難易度を正しく見積もれていないことです。

だから具体化しましょう。言語化しましょう。

そもそも彼女たちが言う「条件」は条件として成立していません。条件が条件として成立するには、下記のルールが必須です。

  • 1条件につき1つの事柄だけ書く(複数条件を内包させない)
  • 形容詞を使わない(人によって定義が違うから)
  • 主語を抜かさない(私は、なのか、家族、なのか、相手、なのかを明文化する)
  • 定量化できるものは定量化する(年収、学歴など)

「人を条件で判断するのってなんかイヤ」「条件って上から目線じゃない?」と言ってこの作業を避けたがる人は多いですが、ゆるふわ条件を提示していても、自分の頭の中に「こういう人がいい」「こんな人は無理」という大量かつガチガチな条件がある限りは同じことです。

難易度が高い条件をいくつも羅列していたら、確率論からしてマッチングする確率は減ります(だから婚活コンサルは「条件は3つまでに絞れ」と言う)。しかし「自分はぜんぜん条件なんて出してないのに」と言いながらも裏にはめっちゃ条件があってマッチングできず、「なんでいい人がいないの?」と嘆く人、ほんとーーーに多いです。

自分のきれいな感情だけでなく真っ黒感情もきっちり見据え、解体し、言語化して目の前に陳列することで「あ、私って結構こういうことを気にする女だったんだ」「思ったより条件がいっぱいあるな」「自分のことばっかり考えてて相手のことをあまり考えてないな」ということを自覚できます。

自覚するということは「自分の情報」が増えることであり、ここにきてようやく条件の取捨選択とリソース配分が可能になります。そうすると戦略がよりソリッドになり、成功率が上がっていきます。

 

目的が「自分が望む人と結婚したい」なら。

運任せの婚活はいやで成功率を上げていきたいと思うなら。

自分が設定した期限までに結婚したいなら。

ゆるふわワードは滅っ!!!!!

筆圧の谷においでよ。ぱぷりこでした。

だいたいこんな感じの分析を、書籍でも256ページにかけてやってます。

なぜ幸せな恋愛・結婚につながらないのか 18の妖怪女子ウォッチ

なぜ幸せな恋愛・結婚につながらないのか 18の妖怪女子ウォッチ

 

 「恋活・婚活が1年以上うまくいかない」「望みの恋愛ができない」という人におすすめ。自分が近いタイプを見つけて筆圧解体のために使ってほしいです♡安定の9割書き下ろし<です。256ページぎっちりみっちり。でもかわいいイラストがあるから大丈夫♡(免罪符)

婚活女子の迷走・ゆるふわを描く本とマンガ 

 ああ、とうとう倫子さんは「自分の求める条件」を具体的に言語化しないまま8巻まで来てしまいました。「なんか違う」をずっと繰り返してるところ、同じ趣味があるにもかかわらず映画マニア男子と別れるあたりは「あるあるだわー」って感じですが、これどう落とし前つけるんだろうな???ってずっと読みながら思ってる。

あのこは貴族

あのこは貴族

 

 これはcakesの連載をずっと読んでて単行本も買ったんですけど、主人公のひとりのお嬢様がものすっごくゆるふわしてて、「結婚すれば幸せになれる」と思ってハイスペ男と結婚するんだけど、「なんか違う」と思って悶々とするあたりがリアル。ゆるふわで運良く結婚できたとしても、「あれ、思ったのとなんか違った」がつきまとう。

 これも「結婚さえできればいいと思っていたけれど、求めていたものとなんか違った」案件。焦って分析を怠るアラサーの心理と「結婚したらストレスがやばい」心理、離婚して本当に自分が求める条件を把握するくだりがすばらしい。

31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる (ウィングス・コミックス)
 

婚活女子はとりあえず読むべし。著者は、自分が求める条件をきっちり言語化してスケジュール立てて行動できているので、見ていてとてもすっきりする。ソリッドな戦略と行動ってやっぱり確度が上がるということを体現しててよい。

ゆるふわを滅っ☆する本

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

 言語化するには作文技術って大事だと思うんですよ。この本は大学時代の教授から「ゆるふわ脳を言語化するのにまず読め」と言われて渡されました、「曖昧ゆるふわなところを残さない」ための入門としてよい。

世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく

世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく

 

 「具体的にする方法がわからない……」という人にはこちら。分析というと小難しく思えるかもしれませんが、結局のところは「分解できない最小単位にまで分解する」ということ。

 婚活はプロジェクトなので、成果を出すためにマネジメント力が必要。特に働く忙しい女子にとって、マネジメント力なくしてゴールなし!!この本はまんべんなくマネジメントに必要なことを書いているのでおすすめ。タスク管理や時間管理、進行確認など、自分の苦手分野がわかったら、それに必要な本をさらに探してみると、けっこう仕事でも役に立ちます。

イッタランドの生息地