妖怪男ウォッチ

恋愛文化人類学が趣味の外資アラサーOLによる、ラブ魔窟サバイバル記録。

「私はマリア」。男心を搾取する自己中モテ女子が「癒しの聖母」になりたがる怪現象

5月〜は歌う〜アーベマーリアー♪

カトリックでは、5月は聖母マリアの月。百合の花を掲げ、花粉まみれになりながらマリア様を称えた学生生活が思い起こされます。

さて「ハイスペモラハラ男×キラキラ婚活女子」カップルのほっこり記事を書いた時に登場した自己愛モテ女子たちですが、彼女たちの理想の自己像が「すべてを受けとめ許す癒しの聖母」であることに、ミッション系女子校出身としてハレルヤ発作がとまりません。

 

「彼のいいところもダメなところも、私なら受け止められる♡」

「彼が疲れたら癒してあげる存在になりたい♡」

「本当の愛って、彼のすべてを受け入れること♡」

 

聖母マリアルルドの泉に謝ろう!な!

自分の気持ち>>>>>>>>(超えられない壁)>>>>>>>他人の気持ち、自分を甘やかさない人は人非人、自分 is ナンバーワン、自分を持ち上げない女子勢は「自分に嫉妬してる」、男性からチヤホヤ賞賛されていないと気が済まないという、性格と言動すべてが「癒し」から全力撤退しているにもかかわらず、彼女たちが目指す姿は「男性を癒してすべてを包み込む女性像」

この圧倒的な時空の歪みは何なのか?今回は、他人搾取がデフォ♡の自己愛モテ女子が「癒しの聖母」になろうとする「マリア擬態現象」について考察します。

 

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ラファエロのマドンナは最高だよね。

 

自己愛モテ女子の3段階進化

自己愛モテ女子は、3段階の進化フェーズがあります。

  • フェーズ1:女王陛下
  • フェーズ2:下僕
  • フェーズ3:癒しの聖母

人格崩壊なのかな?って思うぐらい何の統一性もないと思うかもしれませんが、上昇婚を狙う自己愛モテ女子はこの進化フェーズをたどることが本当に多い。

自己愛モテ女子フェーズ1:女王陛下

さてここで、自己愛モテ女子の特徴を振り返りましょう。

  • 初対面の印象は「自信がある」「リア充」。合コンで人気があるタイプ
  • 人が集まる時の気遣い力はすごい。明るく場を盛り上げようとする
  • 他人から賞賛され、注目されることによって自己の価値を見出す
  • 特に男性からチヤホヤされることを強烈に求める
  • 甘やかしてくれる人が好き。厳しいことを言う人は嫌い
  • 女性が自分に厳しい場合「自分への嫉妬」だと思っている
  • 他人の痛みより自分の欲望を優先
  • ゆえに浮気・不倫に躊躇がない
  • 彼氏がいない期間に耐えられないため、彼氏は数珠つなぎ
  • 女子だけになると「あの子ブスじゃん」「仕事できなくね?」と本音を垂れ流す
  • 「自分よりスペックと顔面が下」と見なす、おとなしい人間を取り巻きに配置している
  • 親が過保護・過干渉

基本的に彼女たちは女王です。自分を中心に世界が回っています。

「会社に尊敬できる人が誰もいないんだけど」と新卒2年目で豪語できるほど自己評価とプライドが鬼高く、「世の中の人間の95%は自分より下級、残りの4%は自分と同類、1%が尊敬に値する人」と思っています(実際に言われました)。

そのため通常モードでは、恋愛関係は「女王と下僕」であり、彼ぴっぴは下位に置かれるのが基本。

サプライズの誕生日プレゼントが自分好みの色でなければ買い直させ、告白の仕方が気に入らなければやり直させ、自分の体調不良を気づけなければ罵り、腹が経てば相手のメガネを叩き割り、浮気2股3股は当たり前、「むしろ私に付き合ってもらってるだけ感謝しなさい」と言わんばかりの自己中ぶりを発揮。

「彼氏、私と別れるとみんな病むんだよね〜」と「相手にショックを与えるほど愛されてる私」自慢してきますが、それは愛ではなくモラハラによるメンタル不調です。お気の毒です。

下僕ぴっぴがメンタル不調によりドロップアウトしても、ストックが2〜3人いるため、1か月以内に次の下僕ぴっぴを作るため、モテすぎて反省する暇がありません。

 

自己愛モテ女子フェーズ2:下僕

そんなイエスユアマジェスティ街道を爆走する彼女たちを屈服させる男が現れます。

自己愛モラハラ女王を倒せるのは?そう、自己愛モラハラ陛下です。 

自己愛王家の法則を思い出してみましょう(メモに取っていますか?)

「世の中の人間の95%は自分より下級、残りの4%は自分と同類、1%が尊敬に値する人」でしたね。

最後の「1%」に相当する「自分が尊敬に値する人」が現れた時、彼女たちはこれまでの独裁権限をかなぐり捨てて滅私奉公下僕モードへ劇的な進化を遂げます。

あれだけ他人を下僕扱いしていた人がなんで下僕になれるの?という疑問が浮かぶと思いますが、人を殴るけど殴られたことがない人は、相手に殴り返されるとショックで、相手が自分の思いどおりに動かないため執着することが多いから。

 

自己評価が鬼高い自己愛モテ女子がひれ伏す男性は「ハイスペ」「モラハラ」「ヤリチン」のうち2つ以上を持っている人材です。中でも、モラハラ要素は必須です。なぜなら息を吸うように他人を搾取・利用して精神的に殴りまくる人間の近くにいれば、殴り返さない一般人はダメージを受けて倒れるしかないからです。

息を吸うように殴り返せる人間、猛獣調教師、念の達人のみが、決戦のバトルフィールドに立ち続けることができます。具体例は、下記キラキラ記事とnoteの相談をご確認ください。

ハイスペ×モラハラの例

ヤリチン×モラハラの例

「この人…倒れない…特別…!むしろ私が殴られてる…!圧倒的尊敬…!」という明日のモラハラジョーが炸裂すると、自己愛モテ女子はこの状態を「恋愛」と認識して、女王の立場を捨てて忠誠を誓います。

もともと「支配:被支配」の関係に慣れすぎているので、相手が強く自分の立場が弱いと感じたらくるっと立場を逆転できてしまうんですよね。実際、自己愛モテ女子の多くは親から強烈な支配を受けていることが多いです。

 

「この私がこんなに調教されている…!」

「私、支配されてる…!」

「彼の理想に近づいている…!」

「わがままだった私が成長している…!」

彼女たちはモラハラをポジティブに受け止め、モラハラによる圧倒的成長を感じるため、精神報酬もバッチリ。陛下ぴっぴも、彼女が時に自分の手を煩わせることはあっても、よく指導すればちゃんと従い、自分好みに変化していくことに喜びを感じ、2人は幸せな関係を育みます。

自己愛モテ女子フェーズ3:癒しの聖母

さて、下僕期間がある程度を過ぎると、自己愛モテ女子は

「彼のダメなところを、私なら受け止められる♡」

「彼が疲れたら癒してあげる存在になりたい♡」

「彼のすべてを包み込むの♡」

といった「癒しの聖母になりたい」という意味のことを言い出します。

これはつまり「いい女になりたい」ということです。もっと言えば「彼が考えるいい女」「男にとってのいい女」です。

 

このようなことを言い出す背景は、5つ考えられます。

1 「本当の愛」を学んだから

陛下ぴっぴの教育により「苦痛を伴ってでも相手の要求を飲んで従うこと」=「無償の愛」だと学んだ(と思い込んでいる)ことが挙げられます。

「昔は自分勝手に振る舞ってて本当の愛を知らなかった。でも今ならわかる。彼のためなら変われるし、彼のすべて(無茶振りの要求含む)を受けとめてみせる」

と自分の成長を踏まえ、さらなる高みを目指します。

2 彼好みの女が「すべてを受け入れる女」だから

陛下ぴっぴがなぜわがままプーの彼女を教育しているかと言えば「顔は好みだけど中身が自分にふさわしくない女を自分好みにカスタマイズ」したいから。モラハラ男性が望むいい女はもちろん都合のいい女、「自分のいうことを聞き、すべてを受け入れる女」です。

ですが自己愛モテ女子は「自分が都合のいい女に成り下がっている」とは考えません。「普通の女ではたどり着けない境地、真実の愛を知っている者だけができる、究極のいい女になってみせる」とむしろモチベーションが高まります。

3 「いい女」になると自己愛が満たされるから

さらに「いい女」になることは、自己愛モテ女子にとって精神的メリットがあります

「すべてを受け入れる癒しの聖母」はモテます。聖母信仰、地母神信仰が太古から続いている歴史を見てもわかるとおり、人類は男女問わず「自分をすべて受け入れてくれる存在」を求めています。実際、古いモテ本やマッチョ男性が書く「いい女」=「自分が何をしても笑って受け入れて許してくれる女」=「都合のいい女」ですし。

世界的なニーズがある一方、実際にできる人間は滅多にいません。「多くの人が求める希少な女」になることは、できるだけ多くの人からの賞賛を集めたい自己愛モテ女子にとって最高の報酬です。

これまで、男を振り回すファムファタル的自分を「いい女」と思うことで満足してきた彼女たちは、「いい女」像を「男好みにカスタマイズされた自分」にすげ替えることで、再び「自分はすごい」という思いを満たします。

4 「許す=心の広さ」と思って、許しがたいことを忘れたいから

「彼はたまにひどいことを言ってくるんだけど、それは彼が心を開いてくれてるってことだから、それも含めて受け入れなきゃって思う」

「細かいことを気にしないでいられるようになった。許すことって愛なんだね」

このように「彼のすべてを受け入れる」という言葉には「彼のひどい言葉や態度も許す」という意味が込められています。つまり「許すと思いたくなるような、ひどいことを言われている、やられてる」とわかっちゃーいるんですよね。でも「無償の愛とは、相手の弱さや攻撃もすべてを受け入れて許すことであり、それがいい女の条件」と思っているため、すべてを「いい女」という言葉に集約させて忘れようとします。

5 痛めつけてくる男の行動原因を「心の傷」だと思いたいから

彼は心に傷を負ってるの。だから私が受けとめなきゃ」

「あの孤独で美しい人を放っておいたら、あの人はますます闇に落ちてしまう。私がとめないと」

言霊が熱暴走で爆発四散しそうな「心の傷」ポエムを彼女たちは量産します。ポエムの背景にあるのは「なぜ彼は自分にひどいことをしてくるの?」という至極まっとうな疑問なわけですが、ここで彼女たちは「彼は心がきれいで自分のことを愛しているんだけど、心の傷があるかわいそうな人だから」という理由づけに落とし込みます。

 そうすることで、理不尽な行動を正当化できるし、「彼はひどいことをしてくるけど私を愛している」と思えるし、「彼はかわいそうな人なんだ」と思うことで下に扱われても精神的な優位性を保つことができます。

 

このように、自己愛モテ女子は徹底的に自分を「いい女」に改造しようとします。傷つき周りを傷つけつつも愛を求める男と、すべて受けとめ癒すいい女。2人は桃源郷。ハッピー・ピエタ

だったらいいのですが。

癒しの聖母は実在しないから信仰されるんだよ

ですがこれは破綻のサインです。

そもそも「自己像」をそこまでねじ曲げなければならないということは、相当にストレスと負荷がかかっています。しかもその動機がキラキラポジティブなところがなおヤバイ

「私はいい女!」「すべてを許すの!」というキラキラ麻酔をしながら、首と背骨を45度に向けてバキバキバキと折り曲げていくその姿はホラーです。麻酔を打ち続けてトリップ決めてられる間はいいですが、バキッと折れる時は必ずきます。

だって人間には無理だから。癒しの聖母や地母神は、存在しないからこそあれだけ信仰を集めるのです。生身の人間が体現しようとしたら、心を殺すしかありません。心を殺し切れたらもう痛みを感じないので本人は楽かもしれませんが、それが果たして幸せといえるかどうかはわかりません。だいたいは殺し切れずにギブアップします。

結論。つらみ=真実の愛とキラキラ粉飾すると命が危険

 自己愛モテ女子に限らず、1人の人間として敬意を払われずに雑な扱いを受けてつらい恋愛をしている人たちは、その状態を正当化するために「自分を犠牲にして自分が苦しい思いをすることこそが、本当の愛」だと思いがち。

ですが私はそれに断固ノーと言いたい。 

「痛みこそ愛」「苦しみこそ愛」という幻想は、まともな神経なら耐えられない激痛を麻痺させるためのキラキラ幻想であり、そんな麻酔を打たなければやってられないほど、その関係は心と体に毒をまき散らしており、かなり危ない状況なのだと思います。

じゃあ何が愛なのさ?って言われると一言では言えないですが、私にとっては、自分の尊厳と相手の尊厳両方に敬意を払うことどちらかに負担を強いることのないサスティナビリティが必須です。支配するのもされるのもまっぴらごめん。

自己愛モテ女子は、他者への敬意を払って対等な関係を築く、という発想がないから、「支配 or 非支配」「わがままに振る舞うのがいい女 or 徹底的に尽くすのがいい女」「痛めつける or 痛めつけられる」という両極端な選択に走るのだと思います。

 

体にせよ心にせよ、痛い時やつらい時にちゃんと「痛い!」と感じて痛みから逃れられないと、命の危険に関わります。熱湯に手をつけ続けていたらあっという間に火傷します。

 自己愛モテ女子、セカンドポジションに甘んじてる女子やモラハラ被害にあってる女子、すべての「キラキラ麻酔」を自分にぶっ込んでいる女性たちに言いたい。

痛覚や感情は、生きる上で必要だから備わってるんです。

「大いなる愛」という言葉で麻酔をかけちゃダメ、絶対

痛いときは痛いと言い、速やかに痛みやつらみを与える存在・場所から距離をとること。

ボート部が最初に学ぶのは溺れ方。空手部が最初に学ぶのは受け身。恋愛する女たちが学ぶべきは、ダメージをもろ受けてキラキラ麻酔を打って無償の愛ダブルピーススマイルすることではなく、危険とダメージを最小限にする初動を徹底する訓練です。

 

なお、自己愛モテ女子が聖母になりきれず爆散したその後ですが「木っ端微塵になった自信を取り戻すために自分を崇拝するハイスペ下僕と結婚」というところに着地しました。失敗から学ばない!でもしょうがない!自己愛モテ女子だもの!エイイイイイイイメンッ!!!

 

 癒しの聖母漫画とか

彼氏彼女の事情 (1) (花とゆめCOMICS)

彼氏彼女の事情 (1) (花とゆめCOMICS)

 

現アラサー世代の恋愛観に多大な影響を与えたと思われる本作。闇落ちした有馬くんを受け止める雪乃に「女神」を見て、「自分もこうなりたい!」って共感するんですよ自己愛モテ女子が。

 「カレカノ」に並び、アラサー女の「いい女は男の闇を受けとめる女神像」を作った本田透氏。闇〜〜〜闇〜〜〜〜〜(発作)

純潔のマリア 1 (アフタヌーンKC)

純潔のマリア 1 (アフタヌーンKC)

 

 こういうマリアだったらよかったんだけどね…(ガンジス川を眺める目つき)。大胆で強いマリア(処女だけど)、かわいすぎて大好きです。 

飴菓子(1) (ITANコミックス)

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 相手への徹底的な献身と報われない愛を描き、世のセカンド女子や不倫女子が共感せざるをえないと思われます。この耽美さすっごい好きなんだけど、これに自己投影すると命を落とすよ☆

聖書の名画はなぜこんなに面白いのか (中経の文庫)

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 宗教画はどれも同じと思うなかれ。聖人のアトリビュートとかどうやってエロスを書こうとするかとか、超楽しい。  

はじめての土偶

はじめての土偶

 

土偶本を紹介(2回目)する恋愛ブログは『妖怪男ウォッチ』だけ(たぶん)!すべてを受け止める地母神は土偶レベルの魂じゃないと無理だと思う。 

封神演義 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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 それか妲己たんレベルじゃないと…。(Kindle版になってて歓喜のあまり貼った)

 

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