妖怪男ウォッチ

恋愛文化人類学が趣味の外資アラサーOLによる、ラブ魔窟サバイバル記録。

なぜ高収入バリキャリ女子が「自分より年収が高い男と結婚したい」と上昇婚をめざすのか

アラサー女や婚活女子と話をしていると、必ず出てくるのが「お相手の年収」話。

「自分より年収の高い男じゃないとムリ」

「結婚相手の年収は自分の1.5倍ぐらいが希望かな」

多くの子が「相手の男性には自分より年収が上であってほしい」と口をそろえます。

 

「で、出た〜〜〜わかりやすい上昇婚狙いで、男の年収=自分の価値だと思ってるキラキラ女子〜〜〜」と思いきや、必ずしもこういう子たちばかりではありません。

むしろ最近気になっているのが「平均年収よりも稼いでいるバリキャリ」までもが「年収は同じか自分より高い男性がいい」と言い出すこと。

「男も女も同じぐらい稼ぐ時代だから関係ないよねー」と言っていたはずなのに、気がつけば「やっぱり自分より年収が高い男性の方がいいわ…」と言い出すのはなぜなのか?バリキャリの「やっぱり上昇婚」現象を考察します。

 

本日の妖怪:プライド山男

というわけで、バリキャリ婚活女子にインタビューしてきました。

 インタビュー1

ぱぷ「婚活の調子はどう?」

「もーぜんぜんダメ。ハイスペ男限定の婚活相談所に切り替えた。普通の婚活サイトや合コンだとマジまともな出会いがない」

ぱぷ「ハイスペ男限定?周りにハイスペ男なんてゴロゴロいるし、コンサル男と外銀界隈はモラハラと不倫だらけだから同業とか絶対に無理とか言ってなかったけ」

「そー思ってたんだけど、"ハイスペじゃない普通の男"と実際に出会ってみたら、あまりにもないわーって感じだし、私みたいな仕事バリバリ女のニーズもないし、諦めた。なんかたぶん私、"普通の男"に夢見てたんだよね。その幻想が婚活で砕けちったわ」

ぱぷ「ないわーって思ったのってどこらへん?」

「合コンだと、そもそも年収でドン引かれる。年収1Kいってますってだけで9割の男が消えるよね。男ってなんであんなに自分より高い年収の女に引くわけ???合コンでいい感じになった人がいたんだけど、誰かから私の年収を聞いたらしくて『自分の年収より2倍以上稼いでいる人を幸せにする自信がない』ってつきあってもないのにお断りされたし!!!幸せって年収の高さで決まるわけ!?だったら私は2倍以上幸せじゃないとおかしくない!?」

ぱぷ「出たーーーーそのセリフーーーーーーそれは『男としてのプライドが許せないから、劣等感を刺激する女は無理』って意味ですよ!!!!!」

「それ、大学生の頃の彼氏に言われた!!私が外銀に就職が決まったら、『俺よりいい会社に行くことになったお前のそばにいると劣等感が刺激されるから別れよう』って。22歳の頃ならともかく、アラサーにもなってなにベイベーなこと言ってんだって怒りしか湧いてこなかった」

ぱぷ「年収をあらかじめ言っておいて足切りすればいいのでは?」

「それもやった。そしたら、依存する気まんまんの夢追い男とか、家事も子育ても仕事もしたくありませんみたいなクズプーしか当たらなくてさ…。私は仕事が好きだから仕事に情熱がある人が好きなんだけど、"仕事を辞めたい"オーラがビンビンの人とか、社会や仕事に不満があるけどなにもしない人とかばっかりで疲れた。"自分より年収が低くてもいいから仕事が好きな人"って要件がこんなにハードだとは思わなかった。だからもう"男のプライド"とか、年収を言った瞬間にドン引かれるのとかに疲れて、ハイスペ男限定に絞ったってわけ。ハイスペ男って仕事好きが多いし、やっぱり私の生きる畑はあっちだったと思ったよ…」

ぱぷ「そうかーそうかー…世帯年収で考えれば、妻側が稼いでたら人生プランが広がると思うんだけどなあ…」

インタビュー2

  • 29歳、IT企業のデータ分析職。本業500万+副業で300万稼ぎ、年収は800万。婚活で、半年前に彼氏(メーカー営業職)と出会った。

ぱぷ「婚活成功したんだってね。おめでとー!ラブのろけ聞かせて!」

「いやー実はちょっともめててさ」

ぱぷ「ホワイ?例によってワイン3本あけた後、野宿とかやらかしちゃったの?」

「若い日の過ちをさらさなくていいから!!!そうじゃなくて、総合年収を言ってないんだよね、まだ。本業の方しか言ってない」

ぱぷ「ん?確か副業ってけっこー稼いでなかった?」

「そう、彼が年収400万なんだけど、最初は400と500で世帯年収900万ならいけるよねって話だったんだよね。でもいざ結婚するとか引越しするとかの話をしてる時、どうも相手の"俺が世帯主なんだからがんばららなきゃ"感がきつくなってきて…。"俺は君より100万ぐらい下だけど俺が世帯主でいいよね?俺、今年か来年に出世予定だからさ!"とか言われてさ…いや私あなたの2倍稼いでますとか、今さら言えなくて…」

ぱぷ「そ、それは…早めに言った方がいいという気持ちと、言ったらすごいもめそうという気持ちが半々です…。そもそもなんで最初に言わなかったの?」

「ハイ………それを言われると返す言葉もないんだけど、副業ってしょせんは瞬間的な収入だから、出会った当初は言わなくてもいいかなと思ってたんだよね。まだ稼ぎもそれほどなかったし。でもこの半年で副業が思った以上にうまくいってきて、状況が変わってきた。あと、付き合ってみて、彼がいわゆる"男の見栄"にけっこー敏感なんだって気がついたのもある。私、アメリカ大学卒(ぱぷ注:東大よりも大学ランクが高い超有名どころ)だから、学歴や英語能力で引かれることが多すぎてめげてて…。で、彼はめずらしく引かない人だったから、貴重すぎて、結婚したすぎて、都合悪いところを見逃していた感はある…。彼は"人間は学歴じゃなくて社会人の働き"っていう信条なんだよね。だから学歴をそもそも軽視していただけで、私の学歴を認めていたわけじゃなかったんだよな…。だから自分がこだわる年収ではやたら細かいんだと思う」

ぱぷ「ああ、結婚したすぎると、都合悪いところは見なくなるよね…でもさ、違和感ってめっちゃ重要だと思うんだよ。今それを見逃して、結婚した後に揉めるともっと大変になるよ。どうするかはMちゃん次第だけど」

「そうだよねー」

後日。

「ぱぷりこ、やっぱり別れた」

ぱぷ「ぎゃふんっ!えっ、やっぱりダメだった?」

「まあ、隠しごとしてたから怒られても振られてもしょうがないとは覚悟してたよ。で、まー案の定、年収を隠してたことに激怒。『俺のことあざ笑ってたのか』とか『年収も学歴も下の男と付き合っててなにが楽しいんだ』とか『最低女』とか、想像以上のコメントをぶつけられて疲れた…………。私が最初に言わなかった理由とか、その後に言い出しづらくなった背景とかぜんぜん聞いてくれなくて、ただひたすらキレられて、私がひたすら謝って終わった」

ぱぷ「うわーーーお疲れーーー。確かに年収を言わなかったのが問題の発端だけど、彼が話を聞かないのは彼の問題だから、自分だけが悪かったとか思いつめないで!」

「うん、なんかでももうダメ…。私、もう誰とも結婚できる気がしない…。やっぱダメだ、学歴コンプとか年収コンプとかある男の人マジ無理。次選ぶとしたら、自分より年収と学歴が高い人に絞る…結婚の話が出てきてから発覚とかまじ怖すぎる…」

 

 「男の見栄とプライド」に疲れる女たち

インタビューで紹介したのは2人ですが、こんな話は枚挙にいとまがなく、10人以上から似たり寄ったりの話を聞いています。共通点はこちら。

  • 経済的に自立し、同世代の平均年収よりも稼いでいる
  • 仕事を大事にしている
  • 「男性には自分より上でいてほしい♡」という乙女ストではなく、男女平等が基本
  • 男性の年収や会社名をあまり気にしない

これらの特徴は、キラキラ女子や上昇婚狙いの女子とは真逆です。キラキラ女子や上昇婚狙いの女子は、下記の理由から「自分より年収の高い男性と結婚したい」と言い出します。

  • 年収が平均年収より低い→年収が高い人と結婚して生活水準をあげたい
  • 仕事が嫌い→仕事を辞めさせてくれて主婦業ができる人と結婚したい
  • 男性には自分より上でいてほしい
  • 男性の年収や会社名が何より大事

一方でがっつり稼ぐ勢が「自分より年収の高い男性と結婚したい」と言い出す理由は、「男のプライドと見栄に疲れたから」

彼女たちはスペック重視の結婚を望んでいませんが、劣等感と見下しに疲れ果てて失望し、「そんなことを気にしない男=同レベルの男かちょっと上がいい」と言い出します。

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「深夜のダメ恋図鑑」の諒くんはひどすぎるけど、似たようなことを言う人は結構いる。

 

男のプライド= 自信がないから女は自分より下がいい

彼女たちに限らず、多くの女性は、人生で「女なら自分より下のスペックでいて見下させてほしい」という要求にさらされた経験を持ちます。

ちょっときれいな言霊で言えば「男のプライド」「男の見栄」ですが、これは

  • 「自分は相対比較をして自信をつけるタイプで、学歴や年収などのスペックで優位にいないと不安なので、一緒にいる自分より下のポジションでいてほしい
  • 「プライドは高いが、理想の自己像と現実にギャップがあって自信がないので、自信のなさを埋めるために見下させてほしい
  • 「周りに劣等感を覚えているので、自分の劣等感を刺激しないでほしい

という言葉の言い換えです。

同じ霊長類なのですから、男に限らず女にだってプライド・誇りはあるのですが、なぜか婚活・恋愛ごとになると「男のプライド」という名のもとに「女は男より下にいて男の要求を満たすべき」とナチュラルに思っている人たちが男女問わず多すぎる。

 

対等なパートナーシップ希望の女が苦しむ

「男性は自分より上でいてグイグイ引っ張ってほしい」というタイプや、男性を学歴と年収で見るスペック至上主義女子、「嫁を専業主婦にできない男って、男としてイマイチだと思う」などとおっしゃる女王様など、「男性は女性より上でいてほしい」「上であるべき」と思っている人たちは、プライド男たちとはうまくいくでしょう。

しかし「対等なパートナーシップを築きたい」「自分相手問わずスペックは気にしない」と思っている子たちからすれば、男を立ててくれマウンティングは地獄でしかありません。

特に高収入・高学歴女子にとって「自分より年収・学歴が下」の男性の方が圧倒的に多いため、マジョリティ集団から「見下させてくれない女はムリ」という霊圧を感じることで、「もうイヤー!」と疲れ果てる構造です。

 

「男を立ててあげて」アドバイス風のダメ出し

さらに、周りから「アドバイス」という名のうんコメントが押し寄せます。

 

「君は賢いとは思うけど、女としてはあまり賢くないね。賢さを隠し切るのが本当に賢い女だよ」

「女は男よりちょっとバカじゃないと、かわいげがないよね」

「男性のプライドを刺激せず、いい気持ちにさせてあげて、うまく転がせばいいんだよ。それがいい女ってものだよ」

「男は強そうな女に引くよー隙がないように見える」

「男性は自分が一番でいたいものなんだから、ちょっと偉そうなことを言われても、笑顔で流さないと

 

男女問わずこういうことを言ってきます。「いい女じゃない」「隙がない」「かわいげがない」と責任を押しつけているところが、モラハラパワハラとまったく同じ他責地獄。うるせえバーカバーカって感じですが、あまりにも言われ続けると、心が折れてすさんでくるんですよね。無視しようと思っても心に堆積していき、JP(自尊心ポイント)をゴリゴリ削っていきます。

「え、なんでわざわざパートナー選びの時に嘘つかなきゃなんないの?」「二人とも対等じゃダメなの?」と反発するも、あまりにも言われすぎると「やっぱり私がダメなのかな…」「努力が足りないのかな…」と自分に自信を持てなくなっていきます。

 

精神バリアとしての同類婚&上昇婚チェンジ

そうして一度は「幅広くいろいろな人と出会ってみよう」と言っていた女たちが行き着くのが「同類婚&上昇婚」

スペックが同じぐらいだとそもそも気にしなくなると理由もありますが、努力して自分の望むキャリアを積んでいる人たちはわざわざ他人を見下さなくても自信があるから、という理由が大きいです。

もちろん女性の方が稼いでいてもまったく気にしない男性はいるのですが、その男性と出会うには、かなりの頻度で嫌な思いをしなければなりません。

時間・精神などの投資コストにたいして精神負債を抱えるリスク高すぎ&ヒット率悪すぎでリターン少なすぎとなったら、撤退するのは合理的な選択といえるでしょう。

 

結論。対等な関係を望むならプライド山男は避けろ

私としては、男が稼いでいようが女が稼いでいようが「世帯年収」で考えればいいじゃんと思っているのですが、どうもこの考えはまだまだ一般的ではないようです。

それどころか、私と同じように「相手の年収が自分より低くても気にしないよー」「子育てには自分の貯金を使うし、いざとなれば副業もするから平気だよー」と言っていた子たちが、疲れて「やっぱり男性が年収上のほうがいい。男のプライドめんどくさすぎる」と宗旨替えするのを見るにつけ、男女共働き時代と言っても、ぜんぜん世帯様式が多様化しない理由の一端を見せつけられた感じ。

 

しょーじき、男性をスペックのみで判断するキラキラ女子勢が見下し男と付き合っても「(お互いに相手を人間扱いせず、自分の足りないものを埋める ツールとして使う点がとても似ていて)お似合いだね!」と祝福するばかりですが、対等なパートナーシップを望む人たちが、見下し勢で疲弊していくのを見る のはつらい。

「妻側がバリバリ稼いでいる」代表格と言える川崎貴子さんも「再婚相手に選んだのはムダなプライドを持たない男性」と書いているし、「男のプライド」って対等な関係を望む女にとっては「めっちゃ疲弊させられるもの」だよなーと改めて思う。

 

で、こういうのって自分じゃどーにもならないから「避ける」以外の選択肢がない

もう何度も書いてきていることですが、他人は自分が望むようには変わらないから。特に「自信がない」「相対比較で人を見て自分より下を欲しがるマインド」とかいう価値観レベルのものは変わりません(本人の強い意志がない限りはムリ)。

「年収足切り」は最適な方法とは言えませんが、「うんコメント嵐で自尊心を削られる確率を下げる」という点ではそこそこ機能してしまっているのが現実です。

 

 よく「女は同類婚・上昇婚志向で、下方婚をしたがらない」と言われるし統計を見ても周りを見てもまーそうだよねって思うのですが、高年収・高学歴女子の「スペックとか別に気にしないし、下方婚でもオッケーと思ってたけど、あまりに男のプライド山が高すぎてつらすぎてやめた」という現象は、もっと知られてもいいと思います。

 

そんなわけで、バリキャリ勢に限らず「対等なパートナーシップを築きたい」と望んでいる女子勢におかれましては、「男性を立てたい!摩天楼のように!」という強い意志がないのなら、「いい女じゃない」「かわいげがない」という言葉とともに「見下させてほしい」とナチュラルに要求してくる妖怪に出くわしたら、「自分が悪いのかな?」などと迷わずに「山から見下し男が降りてきたぞー!者ども出会え出会え!」とすみやかに他責警察を呼んで決別しましょう。

 

プライド山に住まう男性陣におかれましては、ぜひ自分の自信のなさ、理想と現実のギャップは己で埋めるよう邁進し、「女」という性別全般に「自信のなさを埋めたいから見下させてほしい」と要求することはやめていただければと思います。 

自分の穴は自分で埋めろ☆

女を道具に使うな☆

同じ霊長類なんだから誇りと感情があるんだぞ☆

現場からは以上です。

 

プライド山男の生態観察

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プライド山に住む「プライド山男」 や、女子をDisることを「いじり」と呼ぶ「Disり芸人」など、妖怪男を17種類、解体ショーしてます。つらい恋愛を退散させるお札も付いてるよ☆ 

深夜のダメ恋図鑑 (フラワーコミックス)
 

 これに出てくるダメ男・諒くんもまた典型的な「男のプライド」男だと思います。なぜまだ別れないのか。私のライフはもうゼロです。

 

 関連ブログ

これは逆パターンで、男性側に「男ってこういうものでしょ?」という理不尽を突きつける女王様の話。あまりにもあれすぎて実在を疑われましたが、実在します。

相手のスペックだけを見るモラハラ男とキラキラ女子の結婚は、恋愛市場が平和になるから一瞬はいいけど、子供が地獄を見る。本当につらい。

「女だから我慢しなくちゃ」と言い続けると、怒りに飲まれて鬼になる。怒りやつらみからは速攻撤退するに限ります。